直島旅館「ろ霞」

2021/10/23 20:55


今、支配人の市川と料理長の牧嶋と三人で献立を決めている最中です。


市川と牧嶋は、二人とも、現在、京都のキッチンイチロクのオーナーシェフであり、世界が尊敬する日本人100人に選ばれた久保田一郎さんが星のリゾート総料理長時代に最後に師事したシェフです。


久保田さんは祇園の割烹料理店で生まれ、日本料理だけでなくフランスでもフレンチを学ばれ星のリゾート時代は五味自在という料理を掲げていました。


二人が受けついた五味自在の精神をろ霞では五味一風と名前を変え、五味(酸味,苦味,甘味,辛味,塩味)、香り、旨味、彩りを自在に操り、味の陰陽を繰り返す事で、食べる人の味覚を開いていき、感動まで導くという設計でコースを考えています。


大まかな献立は決め、この献立を持っての器選びが始まります。器は、そのお店の格を決めます。と、言っても商売で使うものですから、美術館にあるようなものを使う事は出来ません。一般家庭で使われるもの。生産地や雑貨屋に遊びに行って買って帰るもの、新人作家から有名作家の作品まで色々選び代はあるのですが、最近は比較的地元の作家が作ったものや、地域性のあるものを楽しんでもらうのが主流かと思います。

新築で、しかも直島での旅館と言うこともあり、何か今までとは違った事をチャレンジしたいと思っていました。



この度は、京都と、佐賀の有田での器選びです。


京都の器屋さんは、市川の古い繋がりで特別に紹介してもらった、ホームページもない、名前で探しても住所も掲載されていない、京都を普通に歩いていたとしても、気が付かず通り過ぎるようなお店でした。

車で到着するといち早く店から飛び出して来たのは、まるで僧侶のような面持ちで、年齢の割に動きの機敏さや切れの良さが鋭い人。この人は只者じゃない。誰でもそう思うだろう人でした。


器屋さんは、よく喋る人でした。というのも、この人と話すまで、僕は料理屋の器の選びなんたるか、全く無知だったと思い知らされるほどでした。


何にでも物事の道理とはあり、これほどまでの順序が存在するのだと、心から感服させられました。合計、4時間半。その内容、全て伝えられればそれに越した事はないのですが、それは無理なので一番記憶に残っている言葉を一つ二つ。



一、いい器と高い器は全く別です。いいか悪いかと値段は関係ない。

二、みなさん、作家さんのものがいいと思っていますが、本当にいいのは、職人さんのものなんですよ。



自分の目を養うこと、自分が求めているものを知ること、お客様に得してもらうこと。どんな商売も共通の大事な事があるなと、頭の下がる思いでした。わたしは、ここで基本的な器を揃えることにしました。


今までの、自分の器選びは、僕自身が後継だった事もあり、足らない部分を補うことや、古いものを新しいものに変える事で形を作ってきました。

しかし、新店舗の器選びは、限られた予算の中で、できるだけ長く使えるものを選ばなければなりません。それは、色々な役目を担える、色々な場面で使える器である必要があります。目標は最小の量で最大のバリエーションを出せる選び方です。それを基礎として作って、そこに目新しさや、面白さを乗せていくという考え方です。



翌週、僕らは有田へ向かいました。


有田の器屋は、季譜の里でいつも御世話になっていた器屋さんです。僕はもう三度ほど有田へ足を運んでおり、三度ともここの器屋さんが一緒に窯元を回ってくれます。 早い時間い伊丹空港を出て、昼前に長崎空港に到着します。有田へ着いて古い有田焼をつかってお食事を提供するお店でお昼をご馳走になります。器屋さんのお店で、2時間ほど色々な器を見せてもらいます。それから、その時に気に入った窯元を順番に回っていくという半分観光に近いような、毎度とても楽しいお仕事です。


この度、回った窯元は全部で7件。以前来た7年前に比べると新作がとても増えていました。以前と違うのは、窯元がデザイナーを入れるようになったこと。デザイナーが入るとやはり統一感があり、汎用性もあり、料理にバリエーションも持たせられるような工夫のある器が増えていました。それにやはり感性が一味違います。


やっぱり来てみるのは大事だな、としみじみ思いました。季譜の里で使用しているような華やかな可愛い器が沢山バージョンアップして咲いていたような感じで、とても楽しかったです。



ろ霞の夕食は、寿司のコースと会席コースの2種類。ビーガンやペスカトリアン対応、アレルギー対応はすべて行います。

朝食は和風と洋風の2種類から選べます。


また、レストランは宿泊の方以外でも利用できます。ランチ、カフェ、バーがあり、レストランでのランチは4500円くらいのものから本格的な寿司のコースまで。カフェは1500円くらいのパスタやハンバーグのような軽食。バーでは、生ハムのようなおつまみから、ステーキのようなものまで出したいと思っています。



ここからが旅館運営の真骨頂になってきます。

忙しくなりそうですが、さぁ、張り切って頑張ります!




A&C株式会社

代表取締役 佐々木慎太郎